案山子
情報コーナー全景

朝夕は、涼しいというより肌寒ささえ感じるようになってきました。暦の上でも、11月7日の立冬から冬が始まることになります。久山町の上久原では、たわわに実った稲穂で黄金色に輝いていた田んぼも、いつの間にか刈り取られ、秋の風物詩になった「ふるさとかかし祭り」に向けてそれぞれの田んぼに「かかし」がユーモラスな姿を見せ始めています。
「かかし」は「案山子」と書きます。どうしてそう書くのかはよく分かっていないようですが、案山子を田んぼに立て始めた理由ははっきりしています。稲をカラスなどの害獣から守るためです。もともとは、獣肉を焼いたものを田んぼに掲げ「臭い」で追い払っていたので「嗅(か)がし」が「かかし」になったと言われています。田んぼの中に立つ「かかし」は日本の農村の原風景みたいなところがあります。文部省唱歌「案山子」の歌は年配の方ならほとんどの方が幼い頃口ずさんだことでしょう。かかしの歌といえば、さだ まさしさん作詞・作曲の「案山子」を思い浮かべる方も多いかもしれません。田んぼに置き去られ雪をかぶった案山子を見て、都会に出ていった我が子もあの案山子みたいに一人寂しい思いをしていないかと気遣う父親の心情を心にしみるメロディにのせた素敵な歌です。
元々の「案山子」は、害獣を稲穂の実る田んぼに寄せ付けないことがその役割ですから、その風貌は直立不動、実直そのものです。一方「かかし祭り」の「かかし」は、収穫の終えた田んぼに、多くの人々にいろんなところからお出でいただき、楽しんでもらうことが目的です。さだ まさしさんの歌にある「案山子」のように独りぼっちでもありません。久山では、いたずら心満載の様々な工夫がこらされた案山子たちが、大勢の仲間とともに楽しそうに精一杯の愛嬌を振りまきながら皆さんのお越しをお待ちしています。11月いっぱいが展示期間ですが、11月5日(日)は「かかし祭り」の日としてバザーなどのおもてなしも用意されます。
久山の子どもたちに、故郷の楽しい思い出をたくさん作ってもらいたいという「かかし祭り」に携わっておられる地域のボランティアの方々の思いは、さだ まさしさんの「案山子」の歌にある父親の心情に相通じるものがあります。急激に変化し続ける現代社会にあって「ふるさと」やふるさとにおける人々との温かい交わりは、子どもたちがこれからの長い人生の節々において、それぞれがその航路を見失い座礁しないための澪標(みおつくし)の役割を果たしてくれることと思います。
先日レスポアール久山に久山町の情報コーナーが設置されました。町の人々のみならず久山町を訪れた方々に、町の魅力や町の人々の様々な取り組みを発信していくコーナーです。コーナーの開設に合わせて、町の方々の笑顔を展示する久山笑顔プロジェクトが併せてスタートしました。レスポアール久山の職員も「かかし」に負けない笑顔で皆様をお迎えします。

久山町文化交流センター
センター長兼図書館長 太田隆晴