不易流行
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まだまだ厳しい寒さが続きそうですが2月4日はもう「立春」です。「立春」に一番近い太陰暦による「朔日(新月の日)」をその年の初めとしてきたいわゆる旧正月は、2月16日にあたります。中国「春節」、韓国「ソルラル」、ベトナム「テト」など日本以外の多くの東南アジアの国々では、今でも旧暦の正月を本格的に盛大にお祝いしているようです。日本は、明治5年の12月2日(旧暦)の翌日を明治6年1月1日(グレゴリオ暦)とし、今日に至っています。大晦日もなくいきなりお正月になった当時の人々は相当に混乱したのではないでしょうか。以来、日本ではグレゴリオ暦の1月1日を元日として祝うことが進み、旧正月の行事はほとんど見られなくなってきました。ただ、幼いころの記憶では旧正月を祝う地方もまだ多く残っていたような気がします。正月を初春と表現するのも旧暦の名残です。生活に組み込まれた風習・行事はなかなか変えにくく、変わりにくいものです。
「不易流行」という言葉があります。江戸時代の俳人である松尾芭蕉が唱えた俳諧の理念の一つで「『不易』という永遠に守るべき、変えてはならないことと『流行』という新しい句材や表現方法をもとめて変化していくことは、一見相反するようで実はともに大切にすべき俳諧の本質である」というものです。わが国は、明治以来「脱亜入欧」をスローガンに掲げヨーロッパ文明を取り入れ近代化を進めてきました。特に、科学技術の進歩には目を見張るものがあります。今日の社会は、変化すること自体が日常化して変化しないことのほうが特異に感じられてしまうほどです。その変化のスピードは、私たちの対応能力をはるかに超えているのではないかと思われます。発展・進歩という「流行」の推進に努めてきた私たちも、ここらで少し立ち止まり、「不易」という大切に守るべき社会の在り方や人間の本質にゆっくりと向き合ってバランスをとってもいいのではないかと思います。
昭和30年代から40年代にかけて流行った「歌声喫茶」が最近復活し静かなブームを呼んでいるそうです。「歌声喫茶」は唱歌や童謡、フォークソング、歌謡曲など様々な歌をお客のリクエストに応えて、アコーディオンやピアノの伴奏に合わせてみんなで一緒に歌う喫茶店のことです。「歌声喫茶」全盛期に青春時代を過ごされた昭和一桁生まれから昭和20年代の団塊の世代の人々がリタイヤし、青春時代に味わったみんなと一緒に歌うことで得られる緩やかながら心地よい連帯感を求めて通われているというのです。レスポアール久山でも、子ども音楽教室の先生のご協力を得て先月末に「歌声喫茶」を開設することができました。
レスポアール久山では、この「歌声喫茶」はじめ、様々な取り組みを通して、町民の皆様がゆっくりと自分に向き合い、学び、癒され、そして、参加された方々がコミュニケーションの輪を広げ、久山町を「歌声と笑顔があふれる街」にするお手伝いをしていきたいと思います。

久山町文化交流センター
センター長兼図書館長 太田隆晴