鯉のぼり
鯉のぼり_絵

「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」江戸時代前期の俳人山口素堂(1642~1716)の初夏の風物を詠んだ俳句です。耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。久山の山々も常緑の木々の濃い緑の葉と若々しく明るい青葉がコントラストを見せる季節になりました。今年はまだ聞いていませんが、ホトトギスの鳴き声は「テッペンカケタカ」とか「トッキョキョカキョク」と聞こえるようです。これに比べるとウグイスの「ホーホケキョ」は少しのんびり聞こえます。ホトトギスはウグイスの巣に自分の卵を産み付けウグイスに育てさせる托卵という方法をとることでも有名です。自分よりも大きくなったホトトギスのひな鳥にけなげに餌を与えるウグイスの親鳥の姿は滑稽というより哀しさを感じさせます。ホトトギスのひな鳥が孵化してすぐに取る行動が巣の中にあるまだ孵化していないウグイスの卵を巣の外に運び出すことだそうです。そうすることで自分自身の餌を確保するのです。生物が生きぬいて子孫を残していくことの厳しさを感じずにはいられません。先日、鰹のたたきを美味しくいただきましたが、江戸時代の初鰹は随分値段が高く庶民の口には入らないものだったようです。この歌の「初鰹」には、江戸時代の庶民の強い憧れの思いが込められているのかもしれません。
俳句は、五七五のたった17音の中にたくさんの情報や思いが詰め込まれています。また、この五七五のリズムは、私たち日本人が文字を手に入れ、自由に使えるようになった「古事記」「万葉」の昔からなじんできたものです。先日、俳句を世界の無形文化遺産に登録しようという運動がニュースになっていました。五七五 七七の短歌から上の句と下の句を別の人が詠む短連歌、さらに大勢の人で五七五 七七のリズムをつないでいく長連歌へ、その連歌に滑稽や諧謔を取り入れた江戸時代の俳諧、そしてその俳諧の最初の句「発句」を独立させたものとして現在の「俳句」があるようです。俳句は、日本の誇りうる大切な文化の一つです。無形文化遺産に登録されるよう陰ながら応援したいと思います。
「目には青葉 山ほととぎす 初鰹 空に泳ぐは 真鯉に緋鯉」 素堂の句に、5月の風物詩「鯉のぼり」を昔の連歌風に下の句七七を勝手に付け足してみました。鯉のぼりは、江戸時代の裕福な庶民が5月5日の端午の節句に子どもの健康と出世を願って始めたものだそうです。ただ、久山町では、多くの町内でそれぞれの家の庭に高く掲げる鯉のぼりを自粛しています。鯉のぼりを掲げられない家庭の子どもたちへの配慮でもあるようです。この町の人たちの優しさを感じます。
レスポアールでは、子どもたちに鯉のぼりの塗り絵を画いてもらいロビーに展示することで鯉のぼり気分を味わってもらっています。5月5日の子どもの日には、町内の方にお借りした鯉のぼりをロビーの天井に泳がせて、子どもたちの健やかな成長を祈りたいと思います。

久山町文化交流センター
センター長兼図書館長 太田隆晴