初めての文化事業を終えて
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 5月10日五月晴れの日曜日、レスポアール久山の欅(けやき)ホールで浅野祥さんの津軽三味線コンサートが催されました。正調の津軽三味線はもちろん洋楽や演歌にアレンジした曲、太鼓との共演や歌などバラエティ豊かな内容を確かなテクニックと楽しい雰囲気の中で演奏し、ご来場の皆様に三味線の奥深い世界を堪能していただきました。
 浅野祥さんは、2004(平成16)年14歳の時津軽三味線全国大会の最高峰A級で最年少優勝を果たし、その後三連覇し殿堂入りした天才と称される若き三味線奏者です。東京に出て学生生活を送っていた時、実家のある仙台市が東日本大震災で被災します。
 被災された方々に元気を届けたいと被災地に出かけ演奏する中で、大会で高い技術を競い合うことだけでなく、演奏を通して人々と触れ合うことの大切さに気付かれたそうです。
 久山での浅野さんのコンサートは、今回が3回目です。最初のコンサートでその素晴らしい演奏と温かい人柄に触れた久山の方々を中心に「伝統楽器である津軽三味線を次の世代に、さらに世界中の人々に伝えたい」という浅野さんの熱い思いに応えようと「津軽三味線グループ」が結成されます。浅野さんはその後、年に数回久山に三味線の指導に来られ、グループメンバーとともに久山の「猪野さくらまつり」などのイベントにも参加されるなど久山とのつながりを深めています。メンバーは現在では、小学校5年生から80代の方まで20名を数え「久山浅野会」として練習に励み、今回のコンサートにもゲスト出演しました。
 演奏会終了後、その「久山浅野会」の人たちによって、浅野さんと友情出演の太鼓奏者山部泰嗣さんを慰労する会が催され、私もその席に加わらせていただきました。豪勢な料理の宴席ではなく、手作り料理などを持ち寄った20人ほどのアットホームな会でした。
 会が始まると慰労されるはずの浅野さん自身が出席者の一人一人に御酌を始めました。朝早くからの仕込み、リハーサルそして本番と相当に疲れているはずなのに、そのような素振りは微塵も見せず笑顔で話しかけています。その後しばらく姿が見えなくなり、さすがに疲れが出て休まれているのかなと思っていると、流しの三味線弾きという出で立ちで登場し、それから延々2時間以上休むことなく太鼓奏者の山部さんとのセッションが続きました。山部さんの太鼓は会場にあったプラスチックのごみ箱、桴はスプーンです。参加者は驚きながらも大喜び、私も最高のディナーショーを味わっている気分でした。
 伝統文化を守りながらも、その文化を多くの人々に伝えるための工夫や努力を惜しまない姿に触れ、文化事業に取り組む主催者として、まずは奏者、演者の思いをしっかりと受け止めなければならないことに気付かされた一日でした。

久山町文化交流センター
センター長兼図書館長 太田隆晴